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【犬の僧帽弁閉鎖不全症・心雑音】雑音がある・心臓肥大があると言われた|末期症状・治療・食事について獣医師が解説2021年09月02日

【犬の僧帽弁閉鎖不全症】心臓に雑音がある・心筋肥大があると言われた|末期症状・治療・食事について獣医師が解説

【犬の僧帽弁閉鎖不全症】心臓に雑音がある・心筋肥大があると言われた|末期症状・治療・食事について獣医師が解説

 

まとめ
☑︎僧帽弁閉鎖不全症は、僧帽弁の不具合によって引き起こされる心臓病です。
☑︎犬の心臓病の中で最も多い疾患で、小型犬、特にキャバリアで多く見られます。
☑︎僧帽弁閉鎖不全症は一般的に、咳、息切れ、元気消失などの症状を引き起こしますが、弁の障害の程度に応じて、軽度から重度まで様々です。
☑︎僧帽弁閉鎖不全症は内科療法と食餌療法で管理することが可能です。

 

僧帽弁閉鎖不全症とは?

肺水腫を引き起こした犬のレントゲン画像

肺水腫を引き起こした犬のレントゲン画像

僧帽弁とは、心臓内の血液の流れをコントロールする4つの心臓弁のうちの1つです。
心臓が拍動するたびに、弁は血液を通すために開き、血液が逆流するのを防ぐために閉じます。
僧帽弁閉鎖不全症では、僧帽弁が肥厚して塊状になり、正常に閉まらなくなって、血液が逆流するようになります(この際心雑音が発生します)
血液の逆流が起こり始めると、心臓に負荷がかかり、様々な問題が発生し始めます。
僧帽弁閉鎖不全症はすぐに症状が出るわけではありませんが(何年も症状が出ない犬もいます)、通常は時間の経過とともに悪化し、最終的には心不全に至る可能性のある病気です。

 

僧帽弁閉鎖不全症は、犬によく見られる心疾患です。
10歳以上の犬の約30%は、心雑音とそれに伴う僧帽弁閉鎖不全症を有しています。
僧帽弁閉鎖不全症は小型犬に多く見られ、特にキャバリアではほとんどの場合、僧帽弁閉鎖不全症を発症すると言われています。

 

犬の僧帽弁閉鎖不全症の症状・診断・治療と管理について詳しく獣医師が説明します。

僧帽弁閉鎖不全症の症状

肺水腫を引き起こした犬のレントゲン画像

肺水腫を引き起こした犬のレントゲン画像

初期の臨床症状は軽度であるか、あるいは見られない事が多いです。
心雑音のような異常な心音は僧帽弁閉鎖不全症の最初の徴候です。
僧帽弁閉鎖不全症の進行に伴い、
・失神
・いつもより呼吸が速い/息切れする/パンティングする
・体重減少
・咳(特に夜間)
・活動性の低下

などの臨床症状が現れます。
重度の僧帽弁閉鎖不全症の犬では、慢性的な神経ホルモンの活性化により、最終的に肺水腫を引き起こし、うっ血が起こります。

咳は心不全の徴候と考えられていますが、心不全ではなく、呼吸器疾患に罹患しているケースもありますので鑑別が必要です。

僧帽弁閉鎖不全症の診断

心雑音があり、僧帽弁閉鎖不全症を疑う場合、診断を確定するためにいくつかの検査を行う必要があります。

・超音波検査(エコー検査)
・レントゲン検査:心臓の大きさや肺に水が溜まっていないかを確認します
・血圧測定
・心電図
・血液検査(NT-proBNP、ANP)

僧帽弁閉鎖不全症は、A~Dまでステージが分類されています。

A 僧帽弁閉鎖不全症になりやすい犬種(キャバリアなど)で、現在問題の兆候がない(雑音や症状がない)場合。
B1 心雑音はあるが、心臓病の症状はなく、超音波検査やX線検査でも変化がない場合。
B2 心雑音が聞こえるが、心不全の症状はなく、心肥大がある。このステージから、心臓の薬を開始する必要があります。
C 心臓病が悪化し、心不全の兆候が明らかになります。(例:咳、散歩が遅くなる、失神)
D  治療に反応しない末期の心臓病です。

 

 

僧帽弁閉鎖不全症の治療

僧帽弁閉鎖不全症の治療は以下の薬剤が基本となります。

ピモベンダン いわゆる強心薬です。カルシウム感受性を高めて心筋の収縮力を増加させ、血管拡張を行います。ピモベンダンは、心不全の犬の生存率を大幅に向上させます。
ACE 阻害薬 ACE阻害剤は、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系に直接作用し、心臓のうっ血を抑制することができます。
利尿薬 軽度の心不全の犬には0.5〜2mg/kg/day、重度の症状の犬には4〜6mg/kg/dayを投与する事が一般的です。生死にかかわるような心不全の犬には、2~4mg/kgを2~4時間ごとに静脈注射します。
アルドステロン拮抗薬  アルドステロン拮抗薬はレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系を遮断し、適度な利尿作用をもたらします。ヨーロッパの研究では、2mg/kgを投与することにより、心不全の犬の生存率が有意に増加することが示されています。

 

僧帽弁閉鎖不全症の食事療法

ナトリウムを制限した食事や過激な運動の制限など、生活習慣の改善を行う治療法もあります。

心不全を発症した犬の場合、その後の生存期間は10ヶ月〜18ヶ月と言われています。