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【猫の肥大型心筋症|長生きできるの?】呼吸が荒い・ぐったりしている|もしかすると肥大型心筋症かも?獣医師が最新論文を交えて徹底解説2021年09月01日

【猫の肥大型心筋症|長生きできるの?】呼吸が荒い・ぐったりしている|もしかすると肥大型心筋症かも?獣医師が最新論文を交えて徹底解説

【猫の肥大型心筋症|長生きできるの?】呼吸が荒い・ぐったりしている|もしかすると肥大型心筋症かも?獣医師が最新論文を交えて徹底解説

 

肥大型心筋症は、猫の心疾患の中で最も多く診断される疾患です。

猫の肥大型心筋症は、猫の心臓の筋肉の壁が厚くなり、心臓の効率が低下し、時には体の他の部分にも症状が現れる病気です。

肥大型心筋症は、生後4か月から20歳までの猫で幅広く診断され、健康な猫を対象に心検査を実施したところ、健康な猫の15%で肥大型心筋症が認められたと報告されています。(参考文献:1,2)

つまり健康そうに見える猫でも、肥大型心筋症に罹患している可能性がありますので、注意が必要です。

 

肥大型心筋症の生存期間

猫の肥大型心筋症の生存期間中央値は以下の通りです。

  動脈血栓塞栓症あり 心不全あり 左房拡大あり 心不全なし
肥大型心筋症 184日 194日 229日 10.9

症状が出ていない肥大型心筋症の場合は10.9年と長期間生存可能です。

しかし、

・心不全

・左房拡大

・血栓塞栓症

を伴う肥大型心筋症の場合には、生存期間が短くなってしまいます。

 

ですので、肥大型心筋症の早期発見が非常に重要です。

 

猫の肥大型心筋症の原因

好発猫種 メインクーン

心筋症の好発猫種であるメインクーン

肥大型心筋症は、以下の特定の品種で多く認められます。
メインクーン
ラグドール
・アメリカンショートヘア
・ブリティッシュショートヘア
・スフィンクス
・ペルシャ
肥大型心筋症を患っている猫の中には遺伝子の変異が確認されていることから、遺伝が関係している事も考えられています。

肥大型心筋症の発症の仕方は先天性後天性に分けることができます。
先天的(遺伝的)な肥大型心筋症は、猫が若いときに発症し、重篤で致命的です。
後天性は、10歳を超える高齢猫で見られ、弁膜症や甲状腺機能亢進症などに続発することがあります。

 

1525293肥大型心筋症の猫では、心臓の左心室が肥厚し、心室の容積が減少し、心筋が異常に弛緩します。
これらの変化により、心臓の拍動が速くなり、酸素消費量が増加し、心筋が酸素不足に陥いります。
この酸素不足により、心臓の細胞が死滅し、心臓の機能が悪化し、不整脈が発生することがあります。

肺水腫

 

これらの障害に加えて、血液の循環が悪化すると、心臓の他の部屋や肺への負荷がさらにかかり、うっ血性心不全の発症(肺水腫・胸水)や心臓内での血栓の形成の原因となります。

 

猫の肥大型心筋症の症状

初期段階では、病気の兆候が見られないことがほとんどです。

胸水貯留を引き起こした猫の肥大型心筋症のレントゲン

胸水貯留を引き起こした猫の肥大型心筋症のレントゲン

また猫は症状を隠すのが上手なので、飼い主様は症状に気づかないことがよくあります。多くの場合、心筋症がかなり進行するまで診断するのは困難です。

進行すると、呼吸が速くなったり、口を開けて呼吸したり、元気がなくなったりと症状を示す猫もいます。
最終的には肺水腫や胸水が溜まり、呼吸困難を引き起こしてしまいます。

 

また、身体検査で

・心拍数が200回/分以上

・呼吸数が80回/分以上

・体温が37.5℃未満

であった場合は心不全を引き起こしている可能性が非常に高いとされています。

 

また肥大型心筋症では、心臓内に血栓が形成されることがあり、生命を脅かす可能性があります。

血栓は、血流に乗って体内の血流を阻害することがあります。

血栓の影響はその場所によって異なりますが、肥大型心筋症の猫では、血栓によって後肢の血流が阻害されることが最も多く、急性の後肢痛や、ひどい場合には後肢麻痺を引き起こします。これを動脈血栓塞栓症といいます。
血栓症は、発症すると極めて死亡率の高い合併症です。

 

猫の肥大型心筋症の診断

猫の肥大型心筋症の診断

胸水・肺水腫を併発した猫の肥大型心筋症のレントゲン

肥大型心筋症の診断には、心エコー検査が用いられます。
肥大型心筋症を発症した猫では、心臓の左心室の壁が厚くなり、容積が狭くなっています。

具体的には、拡張末期での左室心筋壁が6mm以上であった場合、肥大型心筋症と診断されます。

しかし、心臓の肥厚は、脱水・慢性腎不全や甲状腺機能亢進症などの高血圧を引き起こす他の疾患によっても起こります。
心エコー検査を行う前に、これらの病気を除外しなければなりません。

身体検査や心エコー検査と共に胸部レントゲン写真で胸水や肺水腫が起こっていないかの確認を行う事や心電図・血圧測定などの他の検査も猫さんになるべくストレスをかけないよう行う事も重要です。

 

肥大型心筋症のステージ分類

肥大型心筋症のステージ分類は以下のようになっています。

ステージ分類  
ステージ A 心筋症に羅患していないが、 素因あり (上記の好発猫種など)
ステージ B1 心筋症に羅患しているが、臨床徴候はなく、 正常~軽度の左房拡大
ステージ B2 心筋症に羅患しているが、臨床徴候はなく、 中等度~重度の左房拡大 
ステージ C 心不全や動脈血栓塞栓症による臨床徴候が ある、または既往歴がある 
ステージ D 難治性の心不全 

ほとんどの猫では、心不全を発症した状態で診断されるので、ステージC・Dと診断することが多いです。

ステージDの難治性の心不全とは、高用量の利尿剤にも反応しない肥大型心筋症を指します。

 

猫の肥大型心筋症の治療

ピモベンダン

心筋症で使用されるピモベンダン(ベトメディン)

治療法は心筋症の状態によって異なりますが、人間にも使用される薬を使用することがあります。

ピモベンダン: いわゆる強心薬です。製品名はベトメディンなどがあります。心臓の収縮をより効果的に行う薬です。

利尿剤:うっ血性心不全がある場合に投与します。

アスピリン・クロピドグレル:血栓形成や血栓塞栓症のリスクを減らすために、アスピリンやクロピドグレルと呼ばれる抗血栓薬を使用することがあります。

βブロッカー:心拍数が過剰な場合、心拍数を下げるため投与します。

カルシウム拮抗薬:心筋を弛緩させる作用があります。

 

猫の肥大型心筋症の食事療法

 

猫 心臓 フード

RoyalCanine 腎臓サポート

心筋症の猫には、低ナトリウムの療法食が推奨されます

低ナトリウム食により、うっ血性心不全や高血圧症を発症するリスクを減少させることができます。

低ナトリウム食としては、RoyalCanine 腎臓サポートなどがあります。

また猫用のおやつや市販の食事はかなり塩分が多いので、避けた方が良いでしょう。   

 

猫の肥大型心筋症の予後

肥大型心筋症の予後肥大型心筋症の猫の予後はさまざまです。
臨床症状を示さない猫は、何年も生存できることが多いです。
血栓塞栓症を患ってしまった猫は数日で亡くなってしまう事が多いです。

肥大型心筋症は進行性の疾患であることがほとんどで、予後の悪化を示唆する所見としては、うっ血性心不全、血栓塞栓症、低体温(低体温)などが挙げられます。

多くの場合、内科的治療によって猫の生活の質を大きく改善することができます

 

猫の肥大型心筋症でお悩みの方は、当院までお気軽にご連絡ください!

(LINEでのご予約はこちらからどうぞ!) 

 

【執筆者:沖田良太(獣医師)】

 

 

参考文献

1:Paige CF, Abbott JA, Elvinger F, Pyle RL. Prevalence of cardiomyopathy in apparently healthy cats. J Am Vet Med Assoc. 2009

2:Payne JR, Brodbelt DC, Luis Fuentes V. Cardiomyopathy prevalence in 780 apparently healthy cats in rehoming centres (the CatScan study). J Vet Cardiol. 2015