【猫の扁平上皮癌】鼻や耳の皮膚病(ただれ)が治らない!治療・余命について獣医師が解説2020年11月29日
【猫の扁平上皮癌】発生部位(鼻や耳)・治療・余命について獣医師が解説
【最終更新日:2021/1/18 】
高齢の猫で鼻・耳や足の皮膚病が全然治らない!!ということはありませんか?
もしかすると扁平上皮癌という悪性腫瘍を患っているかもしれません。
扁平上皮癌(Squamous cell carcinoma) は、皮膚細胞の腫瘍です。
扁平上皮癌は扁平上皮細胞から発生するため、扁平上皮細胞が存在する場所であれば、どこにでも腫瘍が発生します。
指(爪床)・耳・鼻・まぶた・口腔内などがあります。
通常、扁平上皮癌は単独の病変として発生しますが、多中心性扁平上皮癌(ボーエン病)と呼ばれる扁平上皮癌は、体の複数の箇所に多数(2つ以上)の病変が発生するものがあります。
多中心性扁平上皮癌は猫では稀です。
ネコの扁平上皮癌の原因
扁平上皮癌は、環境要因・遺伝的要因などの危険因子が複雑に絡み合って発症していることが多いです。
特に
・紫外線・日光への曝露
・タバコの煙(飼い主が喫煙者)
・ノミ除け首輪
は、猫の扁平上皮癌の原因となります。
また白色および淡色の猫は扁平上皮癌を発症する可能性が高い傾向にあります。
一方、シャム・ヒマラヤン・ペルシャ猫では扁平上皮癌の発症リスクが低い事が報告されています。
ネコの扁平上皮癌の発生部位・症状
(上の写真は舌にできた猫の扁平上皮癌で、カリフラワー状を呈しています)
扁平上皮癌は、まぶた・鼻・唇・耳・口腔内など紫外線・日光に曝露されやすい部位に発生します。足の指にも発生することがあります。
扁平上皮癌の見た目は
・ただれる(潰瘍)
・赤みを帯びて盛り上がる
・カリフラワー状に増殖する
といったものが多いです。
また多中心性扁平上皮癌では、破裂・自壊して出血することもあります。
その場合は痛みを伴い、最終的にはかさぶたになることがあります。
扁平上皮癌が、足の指にできた場合には、腫れ・痛み・爪の喪失・跛行を引き起こします。そして猫は患部を舐めて噛むなど、自傷行為を起こすことがあります。
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扁平上皮癌は転移するの??
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基本的に局所浸潤性が高い扁平上皮癌ですが、猫の顔面できるものは、顎下リンパ節や肺などへの転移する事もあります。
転移の有無を調べるには、触診でリンパ節腫大を確認する事やエコー・レントゲン検査を行い、肺野の確認や触診では確認できない深部リンパ節を精査することが重要です。
リンパ節が腫大している場合には、リンパ節から採材し、転移の有無を確認することがあります。
ネコの扁平上皮癌の診断
診断は針吸引検査(FNA)や生検により行います。
FNAは針のついた注射器で病変から細胞のサンプルを採取し、顕微鏡で観察します。
生検は、腫瘍を外科的に切除し、病理検査に送ります。
また、足指の腫瘍の場合には、足指部分の腫瘍が本当に足指の扁平上皮癌(原発性)なのか、肺がんの転移による腫瘍なのかを判断するために、レントゲン撮影します。
というのも猫の場合、足指の腫瘍の90%は肺から足指に転移したものといわれているため、レントゲンで肺野を必ず確認する必要があるのです。これを肺趾症候群といいます。
ネコの扁平上皮癌の治療
上顎・舌・喉頭・咽頭以外で発生した扁平上皮癌は、外科切除を行います。
下顎に扁平上皮癌ができてしまった場合にも、外科切除を行いますが、採食することができなくなることが多いので、胃ろうチューブや食道チューブなどを設置します。
その他の治療法としては、
・リン酸トラセニブ
チロシンキナーゼ阻害薬であるリン酸トラセニブは、扁平上皮癌の進行を抑え、寿命の延長を望める分子標的薬です。
リン酸トラセニブにて治療した症例は、無治療群と比較して生存期間が3倍延長したとの報告もあります。
一緒にNSAIDSを使用することが多いです。
・ビスホスホネート
骨破壊を併発している扁平上皮癌の症例では、ビスホスホネートを使用することがあります。
ビスホスホネートは、扁平上皮癌による骨破壊の抑制と疼痛緩和の作用があります。
また、最近では腫瘍細胞抑制に寄与する可能性もあると示唆されています。
・食事療法
扁平上皮癌では、腫瘍による痛みなどから、食事を思うように食べれず、QOLが悪化してしまう事が多いです。(特に口腔内にできた扁平上皮癌)
ですので、扁平上皮癌であった場合には、胃ろうチューブや食道チューブなどの経腸栄養チューブを設置し、QOL悪化を防ぐこともあります。
また温めた柔らかく食べやすいフードを与えてあげたほうが良いでしょう。
QOLが悪化した症例では、脱水を起こしやすくなりますので、積極的な水分の投与や点滴も必要です。
・放射線療法
猫の扁平上皮癌(特に口腔内)には、放射線療法が奏功しないケースが多いです。
少量分割照射での生存期間中央値は2ヶ月とも言われています。
ですが近年、外科切除・化学療法を組み合わせる事で、生存期間を延長できることを示唆する報告もありますので、今後の研究が期待されてます。
ネコの扁平上皮癌の余命
口腔内に扁平上皮癌ができてしまい、外科治療が困難である場合は、予後が悪いことが多く、生存期間は3ヶ月といわれています。
しっかりと外科的に扁平上皮癌を取り切れた場合は、長く生きることが可能な場合もありますので諦めないでください。
猫の皮膚病や扁平上皮癌治療でお悩みの方は、当院までお気軽にご連絡ください!
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