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【猫の肥満細胞腫】高齢猫で皮膚腫瘍ができたら肥満細胞腫かも?良性/悪性・治療・余命について獣医師が解説2020年11月29日

【猫の肥満細胞腫】高齢猫で皮膚腫瘍ができたら肥満細胞腫かも?良性/悪性・治療・余命について獣医師が解説

 

【猫の肥満細胞腫】高齢猫で皮膚腫瘍ができたら肥満細胞腫かも?治療・余命について獣医師が解説

 

“年をとってから、ネコの体に硬いできものができてしまった”ということはありませんか?

もしかすると、そのできものは肥満細胞腫かもしれません!

 

肥満細胞腫は、高齢ネコで頻繁に見られる皮膚腫瘍です。

良性の肥満細胞腫もありますが、悪性で転移してしまうと命に関わることもありますので注意が必要です。

 

今回はネコでよく見られる皮膚腫瘍肥満細胞腫について獣医師が詳しく解説します!

 

肥満細胞腫とは?

肥満細胞腫は肥満細胞(白血球の1種)からなる腫瘍で、皮膚・脾臓・腸に結節や腫瘤を形成します。

肥満細胞腫は、ネコの脾臓の腫瘍として最も多く、皮膚の腫瘍としては2番目に多く(猫の皮膚腫瘍全体の821%を占める)、腸の腫瘍としては3番目に多い腫瘍です。

 

 

肥満細胞って何?

肥満細胞は白血球の一種で、体の多くの組織に存在しています。

肥満細胞は、アレルギー反応に関与しており、アレルゲンにさらされると、化学物質を放出します。この化学物資の一つがヒスタミンです。

ヒスタミンは、アレルギーの一般的な症状であるかゆみ、くしゃみ、鼻水の原因となることで知られています。

しかし、ヒスタミンが過剰に放出されると、アナフィラキシーという重篤な全身症状を引き起こす事があります。

 

 

ネコの肥満細胞腫の原因

なゼ猫が肥満細胞腫になるのか、明確には分かっていませんが、

腫瘍というものは、環境的・遺伝的な危険因子が複雑に絡み合って引き起こされています。

ちなみに、犬の肥満細胞腫は、細胞の複製・分裂に関与するKITと呼ばれるタンパク質の遺伝的変異が原因として知られていますが、猫の肥満細胞腫では約67%がこのKIT変異を起こしているといわれています。

 

 

ネコの肥満細胞腫の分類

猫の肥満細胞腫には3つの異なる形態(皮膚型・脾臓型・消化器型)が存在します。

皮膚型肥満細胞腫

猫の皮膚腫瘤の約20%は肥満細胞腫で、その約90%は良性です。

一般的に皮膚型の肥満細胞腫は、頭(耳やおでこ)・首によくできますが、どこにでもできます。

小さくて硬く、盛り上がっていて、脱毛しており、かゆみを伴うこともあります。

皮膚型肥満細胞腫は、脾臓などの内臓に転移する事がありますので、注意が必要です。

 

どのようなネコが肥満細胞腫になりやすいですか?

どの猫でも肥満細胞腫が出来てしまう可能性がありますが、高齢猫に多く見られます。

またシャム猫では発生率が高いです。

 

脾臓型肥満細胞腫

脾臓に病変のある猫の約15%が脾臓型肥満細胞腫と診断されます。

脾臓型は他の臓器(肝臓・リンパ節・骨髄・肺・腸)に転移する事があります。

あまり症状が出てこないので、早期発見が難しい腫瘍です。

 

消化器型肥満細胞腫

消化器型肥満細胞腫は主に小腸で発生しますが、稀に大腸(特に結腸)でできる事もあります。

消化器型肥満細胞腫の多くは、近くの臓器やリンパ節に転移してしまいます。

食欲低下・体重減少・嘔吐などを引き起こすことがあり、重症になると、腹水が溜まってくる場合もあります。

 

 

ネコの肥満細胞腫の末期症状

肥満細胞腫が様々な臓器に転移してしまうことで、末期症状が出てしまいます。

食欲不振や嘔吐はもちろんのこと、腹水や虚脱といった症状も発現します。

 

ネコの肥満細胞腫の診断

診断は針吸引検査(FNA生検により行います。

FNAは針のついた注射器で病変から細胞のサンプルを採取し、顕微鏡で観察します。肥満細胞腫は非常に特徴的な細胞形態をしていますので、FNAできちんと採材できていれば、容易に診断可能です。 

生検は、腫瘍を外科的に切除し、病理検査に送ります。

病理検査に送ることで、良性/悪性・どの程度の悪性度なのかを知ることができます。

要するに、病理検査に出さなければ、良性悪性の判断はつかないということですので、積極的に病理検査を行うべきでしょう。

 【執筆者:沖田良太(獣医師)】

 

ネコの肥満細胞腫の治療

肥満細胞腫を外科的に切除することが第1選択です。

病理組織学的所見および病期分類に応じて、化学療法が選択されることがあります。

場合によっては、腫瘤が完全に除去されていない場合や、手術が困難であったり、猫にとって切除が困難な場所にある場合、化学療法や放射線療法が提案されることもあります。

 

手術費用はどれくらいかかりますか?

皮膚型であればおよそ10万円、消化器型や脾臓型であれば開腹や長期入院が必要ですので20万円以上かかることもあります。