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【犬の椎間板ヘルニア】犬が急に歩けなくなった・立てなくなったらヘルニアかも?|グレード・内科療法・手術について獣医師が解説2020年11月24日

【犬の椎間板ヘルニア】犬が急に歩けなくなった・立てなくなったらヘルニアかも?|グレード・内科療法・手術について獣医師が解説

 

椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアは犬の代表的な脊髄疾患で、痛み・肢の麻痺・歩けなくなる・立てなくなる・尿や便が排泄できなくなる などといった症状が出ます。

椎間板ヘルニアはどの犬種でも発生しますが、特に軟骨異栄養性犬種で発生しやすい疾患です。

軟骨異栄養性犬種とは

・M・ダックスフンド

・ビーグル

・シーズー

・ペキニーズ

・コーギー

・トイ・プードル

などの犬種を指します。

軟骨異栄養性犬種では、生後1歳齢未満で椎間板髄核の水分量が低下し、石灰化・軟骨化が進行してしまいます。

そのような髄核変性により、椎間板ヘルニアが発症しやすくなると言われています。

犬の椎間板ヘルニアの原因

推間板ヘルニアは全ての犬で認められ、椎骨と椎骨の間に存在する椎間板の変性が病態の引き金となります。

椎間板

椎間板ヘルニアは2つの病態に分けられ、

変性した椎間板(髄核や線維輪)が逸脱する病態をハンセンⅠ型突出する病態をハンセンⅡ型と呼びます。

犬の椎間板ヘルニアの分類

ハンセンⅠ型変性(椎間板逸脱症)

M・ダックスフンド、ビーグル、シーズー、ペキニーズ、コーギー、トイ・プードルなどの軟骨異栄養性犬種で記められる変性様式で、生後1歳齢未満で椎間板髄核の水分量が低下し、石灰化・軟骨化が進行します。

変性した髄核は線維輪の断裂を伴い、脊柱管へ逸脱し、ハンセンⅠ型変性を引き起こします。

ハンセンⅠ型変性は3~7歳齢急性に発症することが多いです。

ハンセンII型変性(椎間板突出症)

非軟骨異栄養性犬種で認められる変性様式で、加齢(5歳齢以上)により椎間板の線維性変性や線維輪の過形成が進行し、脊髄を圧迫します。

初めは痛みを引き起こし、その後麻痺が出てくる進行性のある慢性的な疾患です。

ハンセンⅡ型の特徴として、同時に複数箇所で発生することがあります。

さらに罹患椎患部にて、変形性脊椎症を併発することもあります。

犬の椎間板ヘルニアの症状

重複しますが、犬の椎間板ヘルニアで起こる主な症状は

・頚部疼痛

・歩行可能な不全麻痺

・歩行不可能な不全麻痺

・四肢完全麻痺

・トイレに行かない、おしっこが出ない

などがあります。

犬の椎間板ヘルニアの発生部位

頚部椎間板ヘルニア

C2-3間での発生頻度が最も高く、頚部痛を発症している場合が多いです。

グレードは3段階に分類されています。(後述参照)

頚部椎間板ヘルニアでは重度の脊髄障害を起こしにくく、四肢の深部痛覚が消失することはまれです。

胸腰部椎間板ヘルニア

胸腰部椎間板ヘルニアの約80%T11-からL3の椎間部に発生し、T12-13椎間部にて最も好発します。

グレードは5段階に分類されています。(後述参照)

胸腰部椎間板ヘルニアは、頚部椎間板ヘルニアと比較して重度の脊髄障害が起こりやすい傾向にあります。

また、T3 以降でハンセンⅠ型ヘルニアを発症した場合には、 横臥位で両側前肢に緊張性伸展を伴うシェフ・シェリントン徴候が認められます。

犬の椎間板ヘルニアのグレード

椎間板ヘルニアはグレードが存在します。
グレードが高くなるほど、症状は重篤になります。

頚部椎間板ヘルニアのグレード分類

グレード1:神経学的異常を伴わず、頚部痛を主徴とする

グレード2:四肢の自力歩行可能な不全麻痺(神経学的異常がある)

グレード3 :四肢の自力歩行不可能な不全麻痺(神経学的異常がある)

胸腰部椎間板ヘルニアのグレード分類

グレード1:神経学的異常を伴わず、胸腰部の疼痛を主徴とする

グレード2:後肢の自力歩行可能な不全麻痺

グレード3 :後肢の自力歩行不可能な不全麻痺(自力排尿は可能です。)

グレード4:侵害受容感覚は温存されている後肢の完全麻痺(排尿ができなくなります。)

グレード5:侵害受容感覚の消失を伴う後肢の完全麻痺(排尿できなくなるだけでなく、後肢に強い刺激を与えても反応できなくなります。)

進行性脊髄軟化症について

ハンセンⅠ型ヘルニアグレード4~5に相当する場合に、5%の頻度で進行性脊髄軟化症が続発する可能性があります

進行性脊髄軟化症とは、脊題の虚血状態に起因した不可逆性の連続的な脊髄の自己破壊現象であり、外科手術により病変部を除去したとしても、進行してしまう恐ろしい疾患です。

発症後3~5日でホルネル症候群が続発し、最後には呼吸筋麻痺により亡くなってしまいます。

犬の椎間板ヘルニアの治療

内科的治療

椎間板ヘルニアのグレードが低い場合には、内科療法を選択することがあります。

行う内科療法は、

・絶対的なケージレスト(1ヶ月以上行います)

・NSAIDSなどの抗炎症薬

・神経保護作用のあるサプリメント

です。

内科療法が奏功せず、グレードが進んでしまう場合には外科手術を選択します。

外科的治療

頚部部椎間板ヘルニアに対しては腹側減圧術(ベントラルスロット術)を行います。

胸腰部椎間板ヘルニアであった場合は、片側椎弓切除術を行います。

 

犬が急に歩けない・立てなくなったらヘルニアの可能性があります。

そのような症状があれば、当院までお気軽にご相談ください!