【犬の血尿|シュウ酸カルシウム】犬の溶けない尿路結石症|食べ物・治療法など獣医師が詳しく解説2020年11月13日
【犬の血尿|シュウ酸カルシウム】犬の溶けない尿路結石症|食べ物・治療法など獣医師が詳しく解説
執筆者:沖田良太(獣医師)
尿路結石症は多くの犬で発症する泌尿器疾患です。
犬の下部尿路疾患の20%が尿石症が原因と言われており、結石が尿管に位置する場合には、急性または慢性の腎臓病を引き起こす可能性があリます。
尿石形成の危険因子として、犬種、性別、年齢、食事構成、水分摂取量、尿路感染症、環境、薬剤投与などが挙げられます。
尿路結石症を患う犬の80%以上がストルバイトとシュウ酸カルシウムが原因です。
今回はシュウ酸カルシウム尿石症(上の写真に真ん中に位置する正八面体構造の物体がシュウ酸カルシウム結晶です)についてお話します。
シュウ酸カルシウム尿石症の好発犬種
シュウ酸カルシウム尿石症を引き起こしやすい好発犬種を以下に紹介します。
・ミニチュア・シュナウザー
・ヨークシャー・テリア
・ビション・フリーゼ
・ポメラニアン
・シーズー
・マルチーズ
・トイ・プードル
などの犬種はシュウ酸カルシウム尿石が形成されやすいです。
また犬種以外でシュウ酸カルシウム尿石症のリスクを増加させる要因としては、
・年齢(多くの場合5~8歳)
・雄
・過体重
であることが挙げられます。
また、去勢済みの雄犬も危険因子であることがわかっています 。
シュウ酸カルシウム尿石症の症状
頻尿・血尿・排尿痛・しぶりが見られます。
尿路閉塞を引き起こした場合、腎不全を引き起こし、命に関わる場合もあります。
シュウ酸カルシウム尿石症の食による治療
より多くの水分を多く摂取し、動物性タンパクや炭水化物を制限する必要があります。
水分を多く摂取するためには、ドライフードのみでなく、ウェットフードを食べることや新鮮な水を常に置きっぱなしにしておくことが重要と言えるでしょう。
そして、犬では尿比重(尿の濃さ)が1.020以下、猫では1.030以下になるように水分摂取を行う必要があります。
水分摂取量を増やし尿量が多くなることで、排尿回数が増え、膀胱内でのシュウ酸カルシウム結晶の滞留時間が短くなります。
どうしてもウェットフードを食べない場合や、水を飲む頻度が少ない犬に関しては積極的に推奨はされませんが、高ナトリウム(100kcalあたり375mg以上)のドライフードを与えることで、ある程度の水分摂取量の確保と尿比重を低下させることができます。
また、動物性タンパク質を多量に含む食品(100kcalあたり10g以上)を摂取すると、尿中カルシウム排泄量が増加し、尿中クエン酸塩排泄量が減少することにより、シュウ酸カルシウム結石ができやすくなります。(1)
また 高炭水化物(100 kcalあたり10.2~18.6 g)の食事を与えられた犬は、低炭水化物(100 kcalあたり0.1~2.5 g)の食事を与えられた犬に比べてシュウ酸カルシウム結石を発症リスクが2.6倍高かったと報告されていますので、注意が必要です。(2)
また、ほうれん草・ちんげん菜・さつまいもなどのお野菜はシュウ酸が多く含まれていますので、なるべく避けましょう。
シュウ酸カルシウム尿石症のサプリメント・薬による治療
シュウ酸カルシウム結石症の治療で、当院がよく使用するサプリメントは、UTクリーンです。
UTクリーンには、ガルシニアという果物の抽出物を使用しており、ガルシニアに含まれるヒドロキシクエン酸が下部尿路でシュウ酸カルシウムの結石をできにくくします。
頻繁に再発するシュウ酸カルシウム尿石に対しては、チアジド系利尿薬の使用を検討することがあります。
チアジド系利尿薬は、カルシウムの腎尿細管再吸収を促進します。
また、チアジド系利尿薬は尿の酸性化を促進するため、クエン酸カリウムの併用を行う事もあります。
過去の報告では、イヌにチアジド系利尿薬を2mg/kg、1日2回の用量で投与した場合、尿中カルシウム濃度が55%低下したことが報告されています。
基礎疾患
原発性上皮小体機能亢進症のような高カルシウム血症を引き起こす疾患は、シュウ酸カルシウム尿石症のリスクを増大させる可能性があります。
また副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)に関しても、シュウ酸カルシウム尿石症のリスクを増大させてしまう可能性があるため、注意が必要です。
最近ではシュウ酸カルシウムの原因は、犬のビタミンDにおける代謝異常ではないかと言われています。
(参考文献)
1)Lulich JP, Osborne CA, Lekcharoensuk C, et. al.
Effects of hydrochlorothiazide and diet in dogs with calcium oxalate urolithi- asis.
2)Chalermpol Lekcharoensuk, DVM, MPH; Carl A. Osborne, DVM, PhD; Jody P. Lulich, DVM, PhD; Rosama Pusoonthornthum, DVM, PhD; Claudia A. Kirk, DVM, PhD; Lisa K. Ulrich;Lori A. Koehler; Kathleen A. Carpenter; Laurie L. Swanson
online Associations between dietary factors in canned food and formation of calcium oxalate uroliths in dogs