歩ける可能性はもうないのでしょうか?
いいえ、ご相談ください。
再生医療をご存じですか?
人の医療の進歩と共に、動物の医療も日々進歩しています。
近年になって、特に注目を浴びている医療分野があります。 それは、本来 再生することが難しいと言われた 脊髄神経を再生させることができる と期待されている治療、『再生医療』 です。
脊髄の病気に、椎間板ヘルニア というものがあります。 椎間板ヘルニアはミニチュアダックスがなり易いと言われていますが、他の小型犬種、大型犬種、そして猫にもかかることがある病気です。
首の骨や背骨を触ってみると、1つ1つの骨の間には隙間があることが分かると思います。 この隙間には椎間板があり、隣り合う骨同士が壊れて削れてしまわないようにするためのクッションの役割をしています。 椎間板ヘルニアとは、このクッションがおかしくなってしまう病気です。 おかしくなった椎間板が、そのすぐ上を走る脊髄神経を押し上げて圧迫します。 それにより痛みを始め、歩行異常、排尿障害などが生じます。
動物の椎間板ヘルニアには、下記の図のように タイプⅠ、タイプⅡがあります。
椎間板ヘルニアの病気の進行段階は、1から5段階まで分類されます。 1が最も軽症で、5が最も重症です。
グレード5の状態は、手術をしても歩くことができないなど、改善が認められないケースが多くあります。 そして、手術をした後にそれ以上の治療ができない、という時代が長く続いてきました。 脊髄というのは、神経の束であり、神経自体が再生することはないと言われていたからです。
「先生、この子のために何かしてあげられることはもうないのでしょうか?」 という飼い主さまの悲痛とも言える言葉に、ただ首を振らなくてはならなかったのです。 しかし、「まだ何かできることがあるはずだ。 歩ける可能性はまだ残っているはずだ。」 獣医師たちのそうした思いから、今、再生医療 に注目が集まっています。
わんちゃんが自力で歩けることは、わんちゃん自身だけではなく、飼い主さまにとっても幸せなことだと思います。 その可能性を少しでも高めることができる治療として、再生医療があるのです。
関内どうぶつクリニックでは、再生医療の一つである 『骨髄幹細胞移植療法』 を実施しています。 骨髄の中にある、どんな細胞にもなることができる万能細胞=「幹細胞」 を安全に増殖させ、負担なく体内に戻すことで治療する、動物に優しい医療です。
ぜひ、当院獣医師にご相談ください。 歩ける可能性はまだあるのですから。
ミニチュアダックスが圧倒的に多いですが、シーズー、ペキニーズ、フレンチブルドック、ビーグル、コッカースパニエルなど他の小型犬種もかかります。 また、大型犬種や猫もかかることがあります。
病院へ行くまでの間、できるだけ動かないように ケージやサークルの中で安静にさせてください。
椎間板ヘルニアによりダメージを受けた脊髄傷害部が広範囲に広がり、意識化で窒息死に至る、という極めて残酷な病気です。 未だ詳しい原因、メカニズムが解明されていなく、有効な治療法もありません。
椎間板ヘルニアは、病気の進行が軽度であればあるほど治る可能性が高い病気です。 反対に、病気の進行が重度であればあるほど治る可能性は低くなります。 早期発見、早期治療が大切です。
椎間板ヘルニアの動物全てに手術が必要というわけではありません。 しかしながら、内科治療に反応しない、痛みだけの症状だが再発を繰り返している、麻痺を起こしている、など症状に苦しんでいる動物たちには手術を検討しなければなりません。
一般的に行われているのは、全身麻酔下での減圧術と呼ばれる術式です。 骨を一部削り取り、脊髄を障害している椎間物質を取り除きます。
入院費用を含め、およそ 20万円です。 手術に必要なMRI検査は、別途でおよそ 10万円です。
基本的に1週間の入院をお勧めします。 しかしながら、病院が嫌いなどうぶつには、もっと早い退院を検討いたします。
再生医療とは、病気や事故により損傷を起こした “通常では再生することのない組織” を 再生・回復させる、という比較的歴史が新しい医療分野です。 薬でもなく手術でもない、患者自身の細胞を用いて、患者自身の自己治癒能力を引き出し増幅する治療法です。
幹細胞を用いた再生医療です。 幹細胞は、神経細胞、骨細胞など様々な細胞に分化することが知られています。 必要とする脊髄神経細胞を作り出すことのできる幹細胞を移植することによって、失われてしまった脊髄神経の機能回復を図ります。
短時間の全身麻酔下で、手や足の骨から骨髄細胞を少量採取します。 それから 2週間かけて幹細胞を培養し、動物の体に戻します。 その後 1週間ごとに 2回、幹細胞移植を行います。
以下が具体的なスケジュールです。
骨髄細胞採取 | 短時間の全身麻酔下で、手や足の骨から骨髄細胞を少量採取します。 |
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▼ | 採取した骨髄細胞を 2週間培養します。 |
幹細胞移植(1回目) | 1回目の幹細胞移植を行います。 |
▼ | 残った幹細胞をさらに 1週間培養します。 |
幹細胞移植(2回目) | 2回目の幹細胞移植を行います。 |
▼ | 残った幹細胞をさらに 1週間培養します。 |
幹細胞移植(3回目) | 3回目の幹細胞移植を行います。 |
以上、合計 3回の幹細胞移植で 1セットです。
初日の骨髄細胞採取プラス 1回目の幹細胞移植は 13万円、2回目 3回目の幹細胞移植は 7万円です。 全て税別となります。
初日の骨髄細胞採取時には、1泊入院が必要です。 幹細胞移植時には基本的に入院ではなく 半日預かりとなりますが、動物の健康状態によっては 1泊入院をお勧めすることもあります。
現時点で獣医療における再生医療のデータは数少なく、残念ながら人医療に大きく後れをとっているのが実状です。 現時点での報告では、幹細胞移植療法によって歩けるようになる動物はいます。 しかしながら、全ての動物が歩けるようになるとは限りません。
全ての病気で苦しんでいる動物たちが歩けるようになるよう、我々も飼い主さまと一緒に頑張っていきたいと思い、一同 日々努力を重ねております。