アレルギー性皮膚炎

アレルギー性皮膚炎とは?

アレルギーは、“本来体に害のないものを、自分の免疫が間違えてそれを外敵と見なし、排除しようと炎症を起こしてしまうこと” を言います。アレルギー性皮膚炎とはアレルギー反応によって引き起こされる皮膚の炎症で、食事が原因の食物性アレルギーと、それ以外の花粉などの環境因子が原因のアトピー性皮膚炎とに分かれます。この炎症がかゆみを生み出し、皮膚の正常な機能を障害し、様々な症状を引き起こします。

アレルギー性皮膚炎で苦しんでおられる動物たちは大変多く、神奈川、東京のみならず、千葉、茨城、埼玉、栃木から皮膚病の診察に来ていただいています。

検査

一般皮膚検査

アレルギー専門外来では、アレルギー治療の前に アレルギー以外の皮膚病がないか診断を行ってからアレルギーの診断、治療を行います。そのため、アレルギ−性皮膚炎の検査にすぐ入るのではなく、感染のチェックなど皮膚科の基本的な検査を行います。

除去食試験

食物アレルギーの原因となるタンパク質を免疫反応が感知する限界以下まで分解したごはん、もしくはタンパク質が体今まで経験したことのないもの一種類のみに限定したごはんを一か月間使ってアレルギー反応が発生しないかを観察する検査です。
つまり、検査用のご飯を一か月間食べて今まであったかゆみ、赤みなどの症状が治まった場合その子は「食物アレルギー」だったという事が分かります。

IgE検査(アレルギーの血液検査)

血液検査を行うことでその子が何に対しての抗原を持っているか(アレルギーの原因は何か)を評価することで即時型のアレルギーを検査します。

リンパ球刺激試験

こちらも血液検査の一つです。食物アレルギーなど、遅延型のアレルギーを検査するものです。

病理検査

皮膚炎が起きている皮膚を少しだけ切り取り(直径6mm)、病理検査センターに送ることで皮膚に何が起きているかを調べる検査です。実際に皮膚を切除するため、半日間のお預かりさせて頂き、鎮静処置の上で局所麻酔を行って出来る限り痛みを感じないように皮膚を取らせていただきます。検査後は縫合を行い、10日以降で抜糸が出来ます。

治療

副腎皮質ホルモン(ステロイド)

かゆみや炎症を抑えるお薬です。ステロイドは優秀な薬ですが、長期的に投薬を行うことで様々な副作用のリスクが発生します。

インターフェロン療法

免疫療法の一つです。アレルギーは体内の免疫バランスが崩れることで発生するので、それを補助することを目的に使用します。

免疫抑制剤

ステロイドは免疫抑制薬の一つですが、別の種類の薬もあります。その子の症状、経過に合わせて総合的に判断し、使用を検討します。

急速減感作療法

現在の医学で唯一アレルギーに対する根本的な治療が出来ると言われているのが減感作療法です。関内どうぶつクリニックでは、減感作療法の中でも最新の急速減感作療法の実施し、その症例数は日本で最も多いです。

減感作療法、急速減感作療法

このところ、神奈川、東京のみならず、千葉、茨城、埼玉、栃木から皮膚病の診察に来ていただくことが多くなりました。当然ですがわざわざこんなに遠くの動物病院まで連れてきていただくわけですから、いろんな病院に行ったけどうまくいかないというものばかりです。そしてこれらのほとんどがアレルギーと診断されてきます。皮膚の病気の30%がアレルギーですし、アレルギーは治らないというのが基本ですから当然なのですが、それにしても多すぎます。

つまり、アレルギーではない完治の見込める病気まで、アレルギーと診断され、ステロイドなどを使い治療されているのが現状です。当院はアレルギー性皮膚炎の治療をうたっているため、特にアレルギー専門外来にいらっしゃる方は減感作療法の治療を求めてお越しになります。しかし実際に減感作療法まで行うことになるのは半数程度です。ではわざわざ遠くからお越しいただいたのに、減感作をやらなかった半分の方はどうなったのだろうとお思いになるでしょうか?減感作をなぜやらなかったのでしょうか?

答えは非常に簡単でやる必要がなくなってしまったからなのです。必要がなくなってしまったというのはどういうことなのか?また新たな疑問が浮かぶとおもいます。
これには2つの理由があります。

アレルギーではなかったため、完治してしまった。
アレルギーであったが、付随した他の疾患の治療を行ってみたら、症状が著しく軽減したため必要なくなった。

については残念ながらまだまだ多く見られます。症例数を重ねていても見逃し、診断ミスをすることは我々でもあると思いますが、何も検査をせずにアレルギーと診断されていることもあります。ただこれらの症例は治ってしまうためにとてもラッキーですし、我々も最も早く結果を見ることができうれしい症例です。

についてもアレルギーということにとらわれすぎた結果起きてしまっていることです。アレルギーはその症状に軽重はありますが、アレルギー単独では症状が軽いものがほとんどです。まずはアレルギーのほかにある感染症、ホルモン異常、栄養学的な問題であったりといった背景をきっちりと診断し、治療することが重要です。その背景を治療して取り除いてアレルギーだけの状態になってみると、痒みや皮膚炎などが著しく改善することが非常に多いのです。アレルギーを治療したわけではありませんが、この段階でご家族の方は満足されることも多く、シャンプー療法や、副作用が少ない外用薬をうまく使いこなすことでコントロールが可能になっていることもおおいのです。このようにアレルギー治療をうたっている当院でも減感作療法が必要ないことが非常に多いということがご理解いただけたかと思います。アレルギー完治率95%と、科学的には説明のつけられない結果うたっているような日本の病院は(きっちりとした教育を受け、資格を持った専門医のいる欧米では考えられない表記ですが)、内容を見ているとここまでの治療のことを喧伝しているようです。

ここでもう一度減感作療法というものを行うか否か、検討する必要が出てきます。
どのような症例が対象になるかというと、
ここまで来てもアレルギーそのものが重症で痒み、皮膚炎の症状に著しい改善がみられない。
改善が認められたものの、完全完解を目指して減感作を行いたい。
という場合です。

本当にアレルギーは治すことができないのか?

インターネットで「犬、猫 アレルギー、アトピー」などという言葉を入れて検索をかけると様々な情報が出てきます。SEO(検索の上位に引っかかるようにすること)対策を行っているのは企業が多いため、サプリメントなどが上位にひっかかってきますが、動物病院でも上位に引っかかってくるものもあります。(うちのホームページもそうかもしれませんね。)インターネットから正しい情報を選別するのは非常に難しいと思います。「この水を飲ませたら、アレルギーが治った。」「このサプリメントでアレルギーが完治。」「当院のアレルギー完治率95%」などと魅力的な文字が出てきます。これについては個人的にいろいろと思うところがありますが、それはまたの機会にとしまして。。。。

アレルギーやアトピーの情報を判断する際にこれだけは覚えておくといいのは、「アレルギー、アトピーは完治が見込めない。」ということです。これは私どもの意見ではなく国際的に獣医学だけでなく人医でも、当たり前の常識なのです。世界中の超優秀な研究者が、国の威信と人生をかけて、国の大金を使い何十年間研究してもまだ克服なんかまったくできていません。ようやくアレルギーに大きく関与している免疫機構や皮膚バリア機構に関する一部が解明されようとしているところです。そのような現実の中で、我々含め、たった数千症例の疫学データさえも出すことのできない一介の臨床獣医師が、アレルギーを完治する仕組みを作るというのは奇跡よりもさらに上の話です。

ここまで語っておいて手前味噌になってしまうのは心苦しいのですが、国連の専門機関であるWHO(世界保健機構)は、人間のアトピー性皮膚炎を治癒に導くことができる唯一の方法として減感作療法のみをあげています。 つまり、科学と医学の世界基準では、減感作療法だけが完治を見込める可能性のある治療なのです。これも少し調べれば私共の考えや意見ではなく、国際的な常識であるのは以上のような理由からご理解いただけると思います。

アレルギーに関しては~流、ここだけでしかできない治療で完治と書いてある内容に関しては大いなる疑問を持って接したほうがいいと思います。もし本当であれば、ぜひとも自分だけの利益にせず学会、論文として発表し皆がその知識を利用できれば動物だけでなく何十億もの人間にも幸せが訪れます。

そのような経緯から当院では、獣医学の先進国アメリカの皮膚科専門病院でアトピー性皮膚炎に第一選択治療として用いられる 減感作療法 をいち早く取り入れ、アメリカでも最新の治療法といわれる 急速減感作療法 を国内で最初に本格的に治療に取り入れた病院です。 よって、国内では最も多い治療データを持ち、たくさんの犬たちをアトピー性皮膚炎の苦しみから解放してきました。

アレルギー性皮膚炎とは?

皮膚病の中で30%を占める病気です。 食事が原因の食物性アレルギーと、それ以外の花粉などの環境因子が原因のアトピー性皮膚炎とに分かれます。

アレルギーは、“本来体に害のないものを、自分の免疫が間違えてそれを外敵と見なし、排除しようと炎症を起こしてしまうこと” を言います。 この炎症がかゆみを生み出したり、皮膚の正常な機能を障害し、様々な症状を引き起こします。

アレルギーにおける国内の獣医学的標準治療とは?

アレルギー性皮膚炎は、現在、視診・問診・簡易的な臨床検査で診断されることがほとんどです。 経験に富んだ獣医師であれば、これで十分な診断が可能だと思います。 その他に、IGE検査(アレルギーの血液検査)、病理検査、除去食試験、リンパ球刺激試験などが行われています。

標準治療はステロイドの投与です。その他に、インターフェロン療法、免疫抑制剤による治療などがあります。

関内どうぶつクリニックのアレルギー専門外来

アレルギー専門外来では、アレルギー治療の前に アレルギー以外の皮膚病がないか診断を行ってからアレルギーの診断、治療を行います。 その後、アレルギー性皮膚炎と診断した場合、食物アレルギー検査を行います。 そしてアトピー性皮膚炎と診断された場合、米国の標準治療で第一選択治療である減感作療法を行うことができます。

関内どうぶつクリニックでは、減感作療法の中でも最新の急速減感作療法を行っています。 国内では最も多くの治療を行っている病院です。その治療に関する報告です。さらに現在症例を積み重ね50以上の症例で行っています。まだまだ少ない数ですが来年度には学会で報告し、論文にする予定です。

アレルギーについてよくあるご質問にお答えします

犬がかゆがっていたので病院に連れて行ったらアレルギーと言われ、治らないからステロイドを飲ませなさい、と言われた。 うちの犬はもう治らないのですか?
もちろんアレルギーであれば完治は難しいかもしれません。 ただ、当院の紹介例、転院例のうちアレルギーが主体の病変は半分くらいです。 つまりアレルギーと診断されたものでも、半分くらいは感染症の治療や適切なシャンプー療法だけで大幅な改善がみられ、生活できるレベルになります。それでだめな場合には、減感作などのアレルギー性皮膚炎に対する治療を行っていくのが良いでしょう。
急速減感作療法を受けたい。どのくらい効くのですか?
減感作療法の反応率(かゆみが50%以上減弱)は80%。これは米国の論文でも、当院が学会で発表したデータでも同様です。 また、横浜市緑区の 『なかまる動物病院』 中丸先生の発表では、ステロイド治療を行っている犬でも優位に薬剤の減量効果が認められています。
減感作療法のデメリットは?
一番大きなデメリットは、20%の症例で全く治療に反応しない可能性があること。 手間と時間とお金が無駄になります。動物に対するデメリットは少なく、大きな副作用として理論上投与時のアナフィラキシー様反応が考えられます。 現在米国で300万頭の動物に減感作治療が実施されていますが、アナフィラキシーによる死亡例はゼロです。
減感作療法は難しく、近所の病院ではできないと言われたが…
確かに標準治療に比べると手間も経験も必要になります。そして残念ながら病院の利益が少ない治療であるため、取り入れていただける病院が少ないのは事実です。 病院としてはステロイドを薬として出し続ける方が、面倒くさいことを考える必要がありませんし、確実に効き目もある上に、病院の収益も高いのです。
しかし当院では、動物に優しい治療を考え、減感作療法を早くから取り入れ実績を積み重ねてきました。 さらに急速減感作療法の導入により、飼い主さまとどうぶつの負担をより軽減することに成功しています。
ステロイドによる治療はだめな治療なのですか?ステロイドは恐い薬なのですか?
標準治療は非常に多く長い歴史もあり、決して悪い治療ではありません。ただ、できるだけ薬を使いたくない、今まで治らなかった病気であったものが治せる可能性があるということを考慮すると、国際的にかつ、科学的に認められたものは 減感作療法しかありません。
ステロイド剤は悪いどころか、とても優秀なお薬です。 しかし長期間の使用で様々な副作用が見られるようになります。しかし内服であっても一生使い続けても問題の無い量というのは明示されています。その範囲で使う分には問題ないとも言えますし、 人間のアトピー性皮膚炎でも、ステロイドの塗り薬は長期間使用で問題がないことが確認されています。
減感作療法にトライしたいが、まずどうすれば?
まずは当院でアレルギー専門外来の予約をお願いします。 診察の際に担当獣医師が詳しく診察をし、減感作治療の対象になるかをお話しします。ほとんどの方が減感作治療を始めるまでに、2次感染のコントロールなどが必要になります。
減感作療法は費用が高そうですが…
減感作療法は始めの一年だけ、1年にかかる費用を均等化すると1ヶ月に 10,000円ほどになります。急速減感作療法の場合、治療開始時に入院が必要になるため、1回目の治療が 35,000円ほど、それからは1ヶ月に 10,000円ほどになります。うまくいった場合の維持治療費は、1ヶ月に 4,000円ほどになります。 薬をずっと続けて行く場合とあまり変わらなくなります。
減感作療法は、家族もすごく大変だと聞いたけどそれはどういうことですか?
減感作療法で最も問題になるのが、注射に通う通院の手間です。 従来法では、始めの1カ月はほぼ毎日の通院が必要でした。しかし当院が行っている 急速減感作療法 では、始めの1ヶ月間に必要な注射を、入院して1日で終わらせることができます。減感作療法と急速減感作療法では、安全性や効果に差がないことは米国の論文でも我々が行った研究でも証明されています。