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猫がトイレ以外で尿をする…どうすればいい?【マーキング行動の原因と対策】2019年10月08日

猫がトイレ以外で尿をする… 【マーキング行動の原因と対策】

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「いつもきちんとトイレで排尿できていた猫が、突然トイレ以外で排尿しました。部屋の中がオシッコで臭ってしまって、とても困っています…。」

 

このような事態は、ご家族にとって大変困ったことですよね。

 

トイレ以外で排尿する理由は、膀胱炎などの内臓疾患や不安定な心理状態が原因となるマーキング行動の可能性が考えられます。

 

猫がトイレ以外で排尿する意味は?

猫がトイレ以外で排尿することには何の意味があるのでしょうか?

 

実は排尿マーキングはそれぞれ全く別の行動なのです、なのでまずどちらなのかを判別する必要があります。

 

原因をつきとめるために、まずはご自宅での猫の排尿の様子を観察し、次の2つのどちらのパターンにあたるのかを確認しましょう。

 

①お尻を下げ、尻尾を水平に伸ばしてオシッコをしている

②立ち姿勢でお尻をやや上げ、尻尾を垂直に立ててやや震わせ、壁や柱に向けてオシッコをしている

 

①は排尿行動で、②は猫特有の尿マーキング行動です。

原因によって治療法は全く異なります。

 

①であった場合は猫で多い膀胱炎の可能性があります。尿検査やエコー検査で診断を行っていく必要があるでしょう。

 

②であった場合は、不安定な心理状態が原因となるマーキング行動の可能性が高いです。

 

 

今回はトイレ以外でする排尿の原因がマーキング行動であった実際の症例をご紹介します。

 

 

実際の症例

先日当院の行動診療科に8歳の雄(去勢済み)の猫、Aちゃんの飼い主様がご相談にいらっしゃいました。

1ヶ月ほど前からトイレ以外で排尿をするようになり、臭いに困っているとのことでした。

排尿パターンを確認すると、立ち姿勢で尻尾を立てて、壁に向かってしているとのこと。

このパターンから、Aちゃんの行動は②のマーキング行動と考えられました。そこでさらにカウンセリングを実施しマーキングをするに至った原因を探しました。

すると、

 

・引越しをした

・小さな子供が二人いて、Aちゃんと遊ぼうとしてちょっかいを出す

・Aちゃんがひとりでゆっくり過ごせる場所がない

・爪とぎを置いていない。(爪とぎもマーキング行動の1つです)

 

という、猫にとってストレスになりやすい状況やマーキングにより自分のテリトリーをアピールしたくなってしまうような状況が明らかになりました。

 

 

マーキングをする猫に行った治療・対策

・引越しという環境の大きな変化による不安感を和らげるため、抗不安薬(フルオキセチン)と猫の安寧フェロモン製剤「フェリウェイ®」を使用する

・Aちゃんのストレスを緩和する行動療法を提案

 

以上の治療を行ってもらったところ、すぐに尿マーキングの回数は減り始め、3週間ほどで完全になくなりました。その後は薬を少しずつ減らして終了してもらいましたが、Aちゃんは尿マーキングをすることなく、トイレできちんと排尿できています。

猫がトイレ以外でオシッコをしてしまうときは、どうすればいいか?

 

まずはご自宅での猫の排尿の様子を観察し、排尿パターンを見極めましょう。

尿マーキングであれば、その不安感・テリトリー意識・性ホルモンの影響などを減らすことで改善させることができます。

治療のメインは行動療法になりますが、不安感のコントロールにはフェリウェイ®(安寧フェロモン製剤)が有効なこともあります。

 

フェリウェイ®(安寧フェロモン製剤)

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猫はフェロモンを感知することができる動物です。

安寧フェロモン製剤であるフェリウェイ®は猫の安心感を高めることが期待でき、問題行動の治療に役立ちます。

 

 

 

問題行動の適切な治療、対策は個々のケースごとに異なります。

またマーキングは、特発性膀胱炎という猫で多発する膀胱炎に起因する可能性があります。特発性膀胱炎についてはこちらの記事をご覧ください。

 

ペットの困った行動でお悩みの方は、関内どうぶつクリニックにお気軽にご相談ください。

 

【執筆者:沖田良太(獣医師)】