犬の歯周病のおはなし③ 〜歯周病の治療、無麻酔ってどうなの?〜2019年02月02日
前回までに犬は歯周病になりやすい、歯周病になると何が起こるか、についておはなししました。
今回は歯周病に対する治療法についておはなししたいと思います。
歯周病の治療では基本的に全身麻酔下でのスケーリング(歯石と歯垢を削り取る)と必要な場合は抜歯を行います。
え、全身麻酔!?全身麻酔は怖いし、トリミングで無麻酔でやってくれるって言ってたけど…と思われた方もいると思います。
実は日本小動物歯科研究会でもアメリカ獣医歯科学会でも無麻酔での歯科処置はやるべきではないとされています。
日本小動物歯科研究会の見解 歯科医師の見解 (外部リンク)
なぜ無麻酔での歯科処置は推奨されないのでしょうか?下の表を見てみましょう。
無麻酔の処置で使用する器具(スケーラー)
無麻酔で歯科処置を行う場合はスケーラーを用います。
頭と身体を押さえて歯石を取っていきますが、細かく動かす必要があり、わんちゃんが動くと歯肉が傷ついたり、尖った先端が目に刺さったりする可能性があります。
恐怖を感じるとご自宅でのお口のケアを嫌がるようになることが多いです。
歯の表面に傷が付くので、歯垢や歯石がさらにつき易くなるデメリットもあります。
そして、歯肉炎の原因は歯周ポケット内の歯垢です。無麻酔で歯周ポケットの中まで綺麗にするのは難しいため、歯周病の治療効果は得られないことが多いです。
麻酔下の処置で使用する器具(超音波スケーラー、ポリッシング用ラバーカップ)
左の器具が超音波スケーラーです。細かい振動で歯石や歯垢を取り除いていきます。
いわゆる歯周ポケット内の歯垢も取り除けるため、歯周病の治療に有効です。
歯の内側も綺麗にできることもポイントです。
ただ、超音波スケーラーで磨いても表面に細かな傷が付きます。そのためポリッシング(研磨)を行います。
右の器具と専用の研磨剤を用いて歯の表面をツルツルにし、歯垢や歯石が付きにくいようにします。
全身麻酔下で行うので、ワンちゃんは恐怖を感じることなく、安全に処置ができます。
全身麻酔、不安に思われる方が多いと思いますが、健康な子であれば99.95%安全に処置が可能です。
当院では月に1回程度、獣医の麻酔の先生に来てもらう日を設けているので、心臓が悪い子、高齢で心配な子は麻酔管理をより万全な状態で行うことができます。
BEFORE AFTER
上の写真は全身麻酔下で歯科処置を行う前と後の比較画像です。
歯石が綺麗になくなっているのが分かると思います。さらに歯肉の内側も綺麗にし、最後にポリッシング(研磨)も行なっているため、これで一度歯肉炎はリセットされ、新たな歯石がつきにくくなっています。
ただ、この後の歯のケアが全くできないとたった2週間で歯肉に炎症が戻ってくるという報告があります。
歯肉炎を再燃させないためにはご自宅でのケアがとっても重要です。
お家でのケア、何をしたらいいのでしょう?歯磨き?ガム?
次回はお家でのデンタルケアについておはなししたいと思います。