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【猫の血尿|特発性膀胱炎❷】猫の頻尿/血尿,原因はフードやストレス?~最新の論文を交えて解説~2020年11月12日

【猫の血尿|特発性膀胱炎❷】猫が頻尿/血尿がでる。原因はフードやストレス?~最新の論文を交えて解説~

【特発性膀胱炎❷】猫が頻尿/血尿がでる。原因はフードやストレス?~最新の論文を交えて解説~

(最終更新日:2020/11/12)

前回の特発性膀胱炎の記事では、下部尿路疾患の大多数は特発性膀胱炎が原因であることをお話しさせていただきました。  
今回は特発性膀胱炎などの下部尿路疾患を引き起こすリスクファクターについてお話しします。

前回もお話しした通り、猫の下部尿路疾患の50%以上が特発性膀胱炎が原因であると報告されています。

 

では、どういった猫が特発性膀胱炎を含める下部尿路疾患を起こしやすいのでしょうか?

 

結論からお話すると

・若齢の猫

・オス猫、特に去勢したオス猫

・水道水を飲んでいる猫

・ドライフードばかり食べている猫

・家にあるトイレの数が猫の風邪と同じ、あるいはそれよりも 少ない環境で生活している猫

上記のような条件では、 下部尿路疾患をより引き起こしやすくなると報告されています。

それでは具体的に結論でまとめたお話を説明していきたいと思います。
(以下より下部尿路疾患をFLUTD、特発性膀胱炎をFICと表記します)

年齢について

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FLUTDを引き起こす猫の年齢は、1~12歳と言われいます。

ですが高齢猫は、慢性腎臓病・糖尿病などの全身疾患をかかえていることが多いため、高齢猫では全身疾患による尿路感染症が一般的な原因です

ですので、高齢猫で血尿がでている場合はFICではない可能性があります。

では弱齢猫が尿路感染症を引き起こしにくいのかと言われると、そんなことはありません。
高齢猫よりも弱齢猫の方が、尿路感染症を発症する可能性が高いと言われています。
弱齢猫では多発性腎嚢胞といわれる先天性の腎疾患をかかえていることがあります。
多発性腎嚢胞に起因する尿路感染症により、弱齢猫の方が高齢猫よりも尿路感染症の有病率可能性が高いと考えられています。

 

体重について

3510370_sいくつかの研究では、過体重の猫はFLUTDのリスクが増加していたと報告されています。

Pusoonthornthumら(2012)(1)は、FLUTDのリスクが、正常体重の猫よりも過体重の猫で4倍も高かったことを報告しました。

なぜかというと、肥満により、尿道と陰茎の周りに脂肪の蓄積を引き起こし、尿道を圧迫してしまう可能性が高いためではないかと考えられます。

ある研究によると、FICの猫はストレスによる過食とストレスを感じてほとんど動かないことにより、肥満をさらに悪化させていることが報告されています。

 

性別・去勢手術について

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WillebergとPriester(1976)(2)は、去勢や避妊手術がオスとメスにおいて、FLUTDのリスク増加と関係することを報告しました。 
そして、FLUTDはほとんど去勢オスで起こっていることがわかりました。

また他の研究では未避妊のメス猫はFLUTDのリスクが低下したと報告しています。

これらの原因としては、去勢手術によって尿道周囲の線維組織密度に影響を与え、尿道を狭めてしまうためだと考えられます。

猫の去勢は、マーキングの軽減や性格を穏やかにするなど複数のメリットがありますが、去勢手術によってFLUTDのリスクを増加させる場合がありますので、注意が必要と言えるでしょう。

 

食事について

食事についてAtirattら(2020)(3)はドライフードの食事は、ドライフードと缶詰の両方を含む食事と比較して、FLUTDのリスクを2.64倍増加させ、ドライフードのみを食べていたFLUTDの猫は尿石症になる可能性が高かったとも報告しています。

つまり水分の摂取が不十分でない場合、濃縮尿(濃い尿)による結晶形成を引き起こしやすくなり、FLUTDにつながってしまう可能性があることを示唆しています。

 

水について

水について水道水を飲んでいる猫は、フィルターによるろ過水を飲んだ猫に比べて、FLUTDのリスクが有意に高いことがAtirattら(2020)(3)の研究によって示されています。

 

トイレについて

トイレについてトイレの数が少ない場合、FLUTDのリスクを増加させます。 

理想的なトイレの数は猫の頭数+1個と言われています。

 

また理想的なトイレの条件とは、 

・清潔であること

・充分に数があること

・適切な大きさ

・形状

・トイレの位置(静かで落ち着いた場所)

などがあります。 

 

“定期的にトイレを掃除していない”などの不充分なトイレの管理は、猫のFLUTDを引き起こす可能性があります。

 

特に多頭飼いでは、トイレが汚れやすく、トイレの数が猫の頭数分さえないことが多々ありますので、多頭飼いの方は注意しなければなりません。

また、ライオンを除く猫科の動物は単独行動を好みますので、多頭飼育は猫にとってストレスがかかりやすい環境であり(縄張り争いなどにより)、不適切な尿排泄・マーキングなどの異常行動を引き起こす可能性があります。

 

(参考文献)

1)Risk factors for feline lower urinary track diseases in thaiand.

Rosama Pusoonthornthum, Pinit Pusoonthornthum, Carl A. Osborne

2)Feline urological syndrome: associations with some time, space, and individual patient factors.

P Willeberg, W A Priester

3)Prevalence and risk factors of feline lower urinary tract disease in chiang Mai, thailand
Kakanang piyarungsri , Sahatchai tangtrongsup, niyada thitaram,phatthamaporn Lekklar& Atiratt Kittinuntasilp