【獣医師監修】子犬・子猫の下痢・血便の原因である寄生虫疾患について2019年11月24日
【獣医師監修】子犬・子猫の下痢・血便の原因である寄生虫疾患について


子犬や子猫をペットショップから家に招いたばかりなのに、下痢・軟便・血便を繰り返すということはありませんか。
そのような消化器症状を放置しておくと衰弱し、 栄養不良や飢餓を引き起こすことがあります。
そして子犬や子猫の下痢の原因としては様々なものがありますが、
・ジアルジア(犬と猫)
・トリコモナス(猫のみ)
といった寄生虫疾患であった場合、 栄養不良・成長不良といった状態がより悪化する傾向にあります。
そのような寄生虫疾患であった場合、 メトロニダゾールという抗生剤を使うことで治療することができることがあります。
当院に来院される子犬や子猫の中にはジアルジアやトリコモナスといった原虫疾患を患っている症例が数多くいらっしゃいます。
✔︎実際に寄生虫疾患を患っていた子猫の症例をご紹介します。
【実際の症例】
年齢は3ヶ月齢の純血種で、来院時かなり痩せていらっしゃいました。
ブリーダーさんのもとから引き取ってからというもの、下痢・血便がずっと続くという症状がありました。
外注検査の下痢パネルという精密検査を行ったところ、クリプトスポリジウムやトリコモナスといった様々な寄生虫疾患が発見されました。
フラジールによる投薬を繰り返し、上記のような消化器症状は治り、体重も増加していきました。
ジアルジア・トリコモナス症の原因
・ジアルジアやトリコモナスは原虫という種類の寄生虫です。
・多くは、お家に子犬・子猫が来る前にすでに感染しており、 多数の子犬・子猫を飼育している環境下(ペットショップ・ブリーダー)での感染率がとくに高いです。
✔️ジアルジアとトリコモナスはそれぞれ異なる形態を示しますので分けて説明します。
ジアルジア症の原因
・ジアルジアは休眠状態の嚢子型(シスト)と活動状態の栄養型(トロフォゾイト)という2つの形態を取ります。
・シストに関しては非常に抵抗性が強く、外部環境においても長期間生存することが可能です。(2週間以上は生存できるとも報告されています)
・このシストの状態のジアルジアを、食物や水と共に口から摂取してしまうとジアルジアに感染してしまいます。
とジアルジア症の感染率が非常に高いことや飼育環境が粗悪な場所では、より感染率が高くなる傾向にあるということが示唆されます。

トリコモナス症の原因
・トリコモナスはジアルジアと異なり、栄養型という1つの形態しかありません。
・栄養型のトリコモナスは腸で増殖し、便に排出されます。
・その便をグルーミングなどによって他の猫が摂取することで、感染が成立します。
そして、栄養型は外界環境では5日間生存が可能といわれています。


ジアルジア・トリコモナス症の症状
健康な動物であればほとんど症状を示さないのですが、子犬や子猫などの免疫の弱い動物や、多頭飼育している動物などで下痢の症状を引き起こすことがあります。
子犬・子猫で、
・軟便 ・下痢 ・血便 ・嘔吐 ・体重減少
がみられます。
酷い場合は、栄養不良となり 飢餓状態になってしまうことがありますので注意が必要です。
ジアルジア・トリコモナス症の診断
診断は主に糞便中のジアルジア原虫を顕微鏡で観察することもできますが、発見できないことがほとんどです。
その場合、 下痢パネルという遺伝子検査を行い、確定診断します。
下痢パネルは左のような結果で返ってくるのが正常ですが、1番初めに紹介した猫さんの症例のように異常があれば、(+)で返ってきます。
ジアルジア・トリコモナス症の治療
また、ジアルジアにはフラジールが効かない場合もあり、その場合はフラジール以外のニトロイミダゾール系の薬を投与することがあります。
ジアルジア・トリコモナス症の予防




ジアルジアに関しては、シストが付着した犬の被毛やハエなどの衛生動物によっても感染しますので、飼育環境を衛生的に改善し、飲み水や餌が糞便で汚染されるのを防止することが大事です。
シストは薬剤に対しても強い抵抗性を有するため、飼育舎やその付近は熱湯消毒および十分に乾燥させ、シストを殺滅することも必要です。
また可能であれば、子犬や子猫の体をシャンプーなどで洗い清潔に保つこともやっておいた方がよいでしょう。
