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【皮膚専科担当医解説】治らない皮膚病(アレルギー・アトピー)は、皮膚バリアの低下が原因2019年11月01日

【皮膚専科担当医解説】治らない皮膚病(アレルギー・アトピー)は、皮膚バリアの低下が原因

 

※こちらは皮膚専科担当医の荒井延明先生による皮膚コラムです。

当院の皮膚科専門診療についてはこちら

 

「痒がっているから、アレルギー、アレルギーは治ることがない病気?」とあきらめてはいませんか?

 犬アトピー性皮膚炎の研究で博士号を取得した獣医師が皮膚専科診療を担当してわかった事。

もしかすると、その子は皮膚のバリアが低下しているだけかもしれません…

皮膚バリア低下の原因としては、

・セラミド不足

・コラーゲン不足

・皮脂の酸化 

などが挙げられます。

皮膚のバリアを強化する治療をした場合、治らないと思っていた痒みが時間とともに回復することもあるので、なるべく早めに受診される事をお勧めします。

 今回は皮膚バリア低下につながる、いくつかの原因についてまとめました! 

 

原因①セラミド不足

動物の皮膚は表面の表皮とその下の真皮の二層に分けることができます。

表皮はさらに何層かの上皮細胞から構成されて、ちょうどレンガで塀を作ったような構造になっています。

そのレンガをつなぎとめているのが表皮間脂質と呼ばれる脂の成分です。

その中でもセラミドとして知られる油脂が皮膚を乾燥から守るための重要な成分です。

アトピー性皮膚炎と診断された子はこのセラミドが不足して、表皮から水分が逃げてしまい乾燥肌となりやすく、表皮の隙間から、アレルギー物質や病原体が入りこみやすくなっている事がわかっています。

アトピー体質を持っていない子でも、シャンプーのし過ぎや、間違ったシャンプーの仕方などで、このサラミドを失ってしまい皮膚のバリアの低下が起こります。

原因②コラーゲン不足

さらに表皮の下には真皮があります。この真皮層には毛細血管や毛根、神経細胞も分布しています。その基質を構成しているのは、コラーゲンです。

なんらかの原因でこのコラーゲンが分解されたり、作られなくなったりすると、表皮にも栄養が届かなくなり、皮膚が薄く、もろくはがれやすくなります。

トイプードルやロングコートの小型犬は特にコラーゲンのトラブルが起こりやすいようです。

ヒューマングレードの品質の良いフードを食べていても、犬種によって必要な量が異なるようで、コラーゲン不足は起こります。 

真皮のコラーゲン不足を解消して皮膚のバリアを高めるためには、吸収されやすい超低分子のコラーゲンのサプリメントを補う必要があります。

原因③皮脂の酸化

皮脂は本来ならば、毛根の隙間を埋めたり、皮膚の表面から水分が蒸発するのを防ぎ保湿の役割をしたり、過剰な菌の増殖を防いだり、皮膚バリアを高める働きをしています。

皮脂を分泌している皮脂線とアポクリン汗腺は動物の頭から尾っぽまでの背中を中心に多く分布しています。

その皮脂の分泌が多過ぎたり、皮脂の酸化が進行すると皮膚のバリアは逆に低下してしまいます。

皮脂を餌にして増殖するマラセチアという酵母様真菌が増え過ぎたり、酸化した油脂が過酸化脂質と呼ばれる化学物質に変化したりして、皮膚に炎症と痒みをもたらしてしまうからです。

こうした現象は皮脂線が多く分布する、背中側に多く見られます。また、脂肪の代謝が落ちてくる中高齢の動物に見られる傾向があります。

簡単な皮膚の検査で、皮脂の状態やマラセチアの過剰増殖を調べることができます。

日頃から酸化した動物の油を含む食事やおやつをあげない様に注意を払うことも大切です。

血液検査で脂質の代謝状態を調べる事もできるので、定期的な検診を受けておくこともお勧めします。

 執筆者:荒井延明