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【特発性膀胱炎❶】猫の頻尿/血尿,原因はフードやストレス?~最新の論文を交えて解説~2019年10月18日

【特発性膀胱炎❶】猫が頻尿/血尿がでる。原因はフードやストレス?~最新の論文を交えて解説~

 

 

(最終更新日:2020/11/11) 執筆者:沖田良太(獣医師)

 

 

「あーー!!うちの猫の尿が真っ赤!!

それになんか何度も何度もトイレに行ってる割には全然オシッコでてないじゃない?!

でも…食欲もあって、元気なのよね…」

 

そういったことはないでしょうか? 

 

そういった場合は、様子を見るなんてぜっったいダメ!

すぐに病院に行きましょう!

 

 

そのような行動がみられた場合、あなたの猫さんはすでに特発性膀胱炎になっているかもしれません。

 

膀胱炎は猫で非常に起こりやすく、幅広い年齢層で発症します。

 

分かりやすく言うと、生まれてから亡くなるまでに膀胱炎を発症しない猫の方が少ないくらいです。

 

また意外にも猫の尿をじっくり見ている飼い主様は、そんなに多くありません。特に多頭飼いの場合は膀胱炎を見逃す可能性が高いです。

 


 

「まあでもうちの猫達は〇〇のフードを食べて、下部尿路ケアをしてるから問題ないわ!

 

そう仰る飼い主さんもいらっしゃるでしょう。

 

たしかにフード管理は、下部尿路疾患において非常に重要ですし、最近では大手メーカーに引けを取らない質の高い市販食も増えています。

 

ですが、フードだけでは防ぐことのできない猫特有の膀胱炎があります。

 

それが冒頭でお伝えした”猫の特発性膀胱炎“です。

特発性膀胱炎は猫全体の1.5-4.6%で発生すると言われています。

また猫の膀胱炎の原因として、特発性膀胱炎に起因するものは50%以上を占めているともいわれています。(その他は尿石や細菌感染によるものです)

厄介なことに、特発性膀胱炎を引き起こす猫の18-58%尿道閉塞を引き起こします。尿道閉塞を併発した場合は、腎不全を引き起こし、命に関わる事もあります

 

 

猫の特発性膀胱炎は様々な原因(特にストレス)により引き起こされ、フードだけでは予防することが困難といえるでしょう。

 

そして実際に下部尿路ケアを謳っているフードを食べているのにも関わらず、膀胱炎を主訴に当院へ来院される方は非常に多くいらっしゃいます。

 

ゆえに特発性膀胱炎の予防・治療として、

下部尿路ケアを謳ったフードにしただけでは、不充分ということがお分かりいただけたのではないでしょうか?

 

ではもっと徹底的に対策するにはどうすればよいのか?

答えは明確です。

 

猫のストレスをゼロにしてあげるような環境作り猫のストレスチェックをまずは行ってみましょう)

 

これが+αの特発性膀胱炎の対策・治療になります。

 

特発性膀胱炎がフードだけでは予防や治療が困難と分かっていただけたところで、次にさらに詳しいお話をしていきましょう。

 

 

猫の特発性膀胱炎の原因

猫の特発性膀胱炎は膀胱自体が問題というよりも、膀胱に影響を与えているストレスや食事が問題です。

また、血尿や頻尿といった症状のある猫の50%以上が特発性膀胱炎が原因だと言われています。

半分以上が特発性膀胱炎ということなので、非常に多いですよね…

検査や治療をしなくとも数日で治ることもあるのですが、また再発し特発性膀胱炎を繰り返す場合がほとんどです。

猫の特発性膀胱炎の症状

・血尿

・頻尿

・トイレに長時間いる

・トイレ以外で尿を漏らす

・グルーミングの回数が非常に多い(ストレスによる)

といった症状が多く見られます。

猫の特発性膀胱炎の検査

血尿や頻尿があるのに、尿検査で尿石や細菌が検出されない場合は、猫特発性膀胱炎が疑われます。

猫の特発性膀胱炎の最新の論文について

2016年に発表されたLongstaffらの論文(1)によると

 

室内飼いの若齢猫(1歳6ヶ月齢)では特発性膀胱炎の発症率が有意に高かった

 

・1歳から1歳6ヶ月までに新しいフードに変更した場合に特発性膀胱炎の発症率が有意に高かった

 

・フード変更して特発性膀胱炎を発症した猫で、ウェットフードに変更した群(元々はドライフードとウェットフードを半分ずつ混ぜていた)において、1番発症率が高かった

 

 

 

 

との報告があります。

 

ポイントとしては若齢猫(1歳6ヶ月齢)は特に気をつけなければいけないという事ですね。

 

また筆者は1歳から1歳6ヶ月におけるフード変更について、

『同居猫が何らかの病気(腎臓病や肝臓病など)になってしまったために、療法食へフード変更せねばならず、それに伴って若齢猫も療法食を食べる事になってしまったケースがある』

 

とも言っているので、決してウェットフードが悪いだとか下部尿路ケア用のフードが悪いというわけではないと思います

 


 

また2016年のDorschらの論文(2)によると

 

猫の膀胱炎によく使用するNSAIDS(非ステロイド系抗炎症薬)は、特発性膀胱炎には効果がなかった

との報告があります。

NSAIDS(メロキシカムが代表的な薬です)は膀胱炎の腫れぼったさを治すために使用する抗炎症薬ですが、特発性膀胱炎には何も効かないという事ですね。(特発性膀胱炎以外の膀胱炎であれば効果を示すこともあります)

 

つまりお薬では猫の特発性膀胱炎は治療困難であるという事です。

 

ではどうすれば良いのか…冒頭でも述べましたが

 

猫のストレスをゼロにしてあげるような環境作り(猫のストレスチェックをまずは行ってみましょう)

 

これに尽きます。

 

 

次回の猫の特発性膀胱炎(2)でより詳しい話を記載していきますので、是非ご覧ください。

 

執筆者:沖田良太(獣医師)

 

(参考文献)

(1)Owner-reported lower urinary tract signs in a cohort of young cats

Louise Longstaff1, Timothy J Gruffydd-Jones1, CA Tony Buffington2, Rachel A Casey1 and Jane K Murray1

(2)Evaluation of meloxicam for the treatment of obstructive feline idiopathic cystitis

Roswitha Dorsch1, Friederike Zellner1, Bianka Schulz1, Carola Sauter-Louis2 and Katrin Hartmann1